職場の座りすぎ対策は個人の努力か|27個中、能力(C)の記号が付くのは1個
職場の対策27個に付いている記号を数えました。能力(C)が付くのは1個、機会(O)は25個、モチベーション(M)は19個です。
座る時間を減らそうとして続かないとき、足りないのは意志なのか、それとも別の何かなのか。国の身体活動・運動ガイド2023には、職場向けの別冊が1枚あります。その2ページ目に、職場での対策が27個並び、1つずつに記号が添えられています。今回はこの記号だけを数えました。
記号は3種類で、何を指すかが資料に書かれている
図の下端に、記号の読み方が1行で置かれています。
能力(C)・機会(O)・モチベーション(M)
この3つがどこから来ているかも、1ページ目に書かれています。
この理論は、行動(Behaviour)は、それを行う能力(Capability)、機会(Opportunity)、モチベーション(Motivation)が総合的に作用することで生じるという考えに基づきます(図2)。
つまり27個の対策には、それぞれ「能力(C)・機会(O)・モチベーション(M)」のどれかの記号が振られている、という形です。資料は記号を付けていますが、その対策がどれに「効く」とは書いていません。記号は1個につき1つとは限らず、2つ3つと並んでいるものもあります。
数えると、能力は1個、機会は25個、モチベーションは19個
①から㉗まで、括弧の中に書かれた記号を1つずつ拾いました。
| 記号の組み合わせ | 個数 |
|---|---|
| O だけ | 8 |
| M だけ | 2 |
| O と M | 16 |
| C と O と M | 1 |
| 合計 | 27 |
記号ごとに数え直すと、O(機会)を含むものが25個、M(モチベーション)を含むものが19個、C(能力)を含むものは1個でした。Cが付いているのは次の1個だけです。
⑲活動的な移動(C,O,M)
逆に、Oが付いていない対策も2個ありました。
⑭情報提供(M)
㉓自転車置き場(M)
27・25・19・1・8・2・16という数は、いずれも当サイトが括弧の中を数えた結果です。資料の側にこれらの数は書かれていません。
資料の本文も、個人の努力だけでは難しいと書いている
記号の偏りと同じ向きのことが、1ページ目の地の文にも書かれています。
働く人が職場で活動的に過ごすためには、個人がその重要性を認識し、意識的に取り組むことが重要です。しかしながら、余暇時間ではなく労働時間において、活動的に過ごすことを重要視するには、個人の努力だけでは難しい側面があります。職場で活動的に過ごすことの意義について共通認識がなければ、職場の同僚から、「仕事をさぼっている」と勘違いされてしまうかもしれません。長時間、座って仕事することを強要されるような職場環境では、個人の努力で活動的に過ごすことは困難です。
続く段落では、働きかける先が1つではないことが書かれています。
近年、図1に示すような社会生態学モデルが注目されており、人の行動に影響する要因が多層的であることが示されています1)。すなわち、個人だけに働きかけるのではなく、組織レベル、地域レベル、政策レベルでの対策を講じることで、集団全体への効果が高まるのです。
その図1に並ぶ層は、数えると5つでした。政策・地域・組織・個人間・個人内で、それぞれに例が添えられています。
政策:法律、政策
地域:社会格差、経済状況、歩道、公園、都市構造、治安
組織:学校、職場、所属組織
個人間:友人、家族、社会的ネットワーク
個人内:性、年齢、遺伝的要因、知識、態度
例として挙がっている語は全部で19です。そのうち個人の内側に置かれているのは5語で、残る14語は自分の外側にあるものの名前でした。「職場」は個人内ではなく組織の層に入っています。
同じ名前の対策が2回出てくる
27個を写しているときに、名前が重なるものが見つかりました。⑧と⑫が、どちらも「仕事関連の相互作用」です。記号もどちらも(O,M)で同じでした。図の中では別の枠に置かれていますが、名前と記号だけを見ると区別が付きません。どう違うのかは、この1枚には書かれていません。
もう1つ、記号の区切りが1か所だけ違っていました。記号が2つ以上並ぶのは17個で、そのうち16個は読点で区切られていますが、⑪だけが「O.M」とピリオドで区切られています。数えるうえでは同じ2つとして扱いましたが、そう読んでよいと資料に書かれているわけではありません。
資料自身が、この図の限界を先に書いている
27個をどう使うかについて、資料は先に断りを置いています。
これらは概念的な整理であり、費用面なども考慮すると、実現可能性が低い事例も含まれます。ここで示された対策を念頭に置きながら、費用対効果の視点も踏まえて、実際の取組を決定していきます。
並んでいること自体が、やるべきだという意味ではありません。この27個のうち、後ろの事例集に実例が付いているのは12個でした——そちらはデスクワークの座りすぎ対策は何が挙がっているか|27個中12個に事例が付くで数えています。今回の記事と同じ1枚のPDFを、別の数え方で見たものです。
読み取れなかったこと
どの対策がどの層に属するかは、この読み方では決められませんでした。図3には政策・組織・個人・自然環境・建造環境といった枠の名前も入っていますが、PDFから取り出した文字列では、枠の名前と丸数字の並び順が崩れます。丸数字・名前・記号の3つは1行に収まって取れるので数えられましたが、その行がどの枠の中にあったかは、取り出した文字からは復元できません。
能力(C)が1個しかないことの理由も書かれていません。資料は能力について、身体的な能力と心理的な能力があり、前者はトレーニングで、後者は教育で高められると書いていますが、その2つが27個のどこに対応するかは示されていません。
参考文献13本には当たっていません。記号の考え方には2)、対策の図には3)という番号が振られていますが、元の論文をたどってはいません。取り出しは2つの抽出器で行い、両方で取れた行だけを引用に使っています(両方で取れた行329、片方にしか無い行3。3行はいずれも参考文献の欄です)。
この記事が扱っていないこと
- どの対策から始めるべきかは書きません。順位は資料にも付いておらず、実現可能性が低いものも含まれると資料自身が書いています
- 体のことは判断しません。この資料には健康リスクの記述もありますが、当サイトが扱うのは記号と個数までです
- 職場に何を導入すべきかも書きません。㉖にスタンディングデスクという名前がありますが、製品を比べることはしません
- 自宅の机まわりは別に数えています——画面との距離と休憩は何分か|40cm以上と1時間ごとに10〜15分、在宅の机と椅子は何cmか|調整できることが先で65〜70cmは条件つき
この情報が、どこから来ているか
厚生労働省のサイトに置かれている全4ページのPDFを、2026年9月24日に取得して読みました。公的機関の資料です。図の作成者として、令和4年度厚生労働科学研究費補助金の研究班が記載されています。
数え方を書いておきます。丸数字①〜㉗の1つずつについて、名前の後ろの全角括弧の中にあるアルファベットを拾い、C・O・Mのどれが入っているかで分けました。⑪の「O.M」はOとMの2つとして数えています。層の数は、図1で「:」の前に置かれた語を数えて5つ、例の語は「、」で区切られた数を足して19です。
PDFの文字には、1字ずつ空白の入った箇所があります。上の引用のうちCapability・Opportunity・Motivationを含む1文は、その空白を詰めてつないでいます。字の並びは変えていません。
出典: 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」INFORMATION 2「働く人が職場で活動的に過ごすためのポイント」(全4ページのPDF)。2026年9月24日に取得して読みました。同じPDFを別の数え方で見た記事が1本あります。
訂正
- 訂正 2026-09-25: 題と見出しに「27個中、能力に効くと書かれたのは1個」と書いていましたが、資料は対策に「能力(C)」などの記号を付けているだけで、「効く」とは書いていません。資料にあるものを数えた形の「27個中、能力(C)の記号が付くのは1個」に直しました。本文でも、資料の言葉ではない言い換え(3つのうちどれに効くと考えられているか)を鉤括弧に入れていたため、資料の語「能力(C)・機会(O)・モチベーション(M)」に直しました。影響範囲: 27個・能力1個・機会25個・モチベーション19個をはじめ、記事の数はどれも変わりません。変わったのは題と見出し、本文の1文です。