穴を開けずに家具を固定する、2つ以上を組み合わせる方法
賃貸だと壁にネジを打てません。持ち家でも、家具に穴を開けたくないことがあります。そのため「固定はできない」として、対策を配置の工夫だけで終えている人は多いはずです。
ただ、東京消防庁の資料には穴を開けずに固定する方法が、はっきり書かれています。
「2つ以上を組み合わせる」と書かれている
「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」(令和6年1月)の質問と回答から引きます。
質問8 壁や家具に穴を空けられないのですがどのように対策をすれば良いですか?
最も効果の高い家具転対策器具はネジで固定するもの(L型金具等)です。しかし、賃貸住宅や大切な家具にキズをつけたくない方には、穴を開けなくて済む器具を、2つ以上組み合わせて行う方法があります。例えば、ストッパー式器具(もしくはマット式)とポール式器具を2つ組み合わせることで、一番効果の高いL型金具と同等の効果が期待できますので、こうした方法で対策を行うことも有効です。
読み方として大事なのは、「2つ以上」「組み合わせて」という条件です。ポール式だけ、ストッパー式だけ、という話ではありません。
また、原文は「同等の効果が期待できます」です。実験の数値が示されているわけではないので、この記事でも「同じ」とは書きません。
それぞれの器具が、何をしているか
東京消防庁の電子学習室に、器具ごとの説明があります。
| 器具 | 何をするか |
|---|---|
| L型金具 | ネジで壁や床に直接固定する |
| ポール式 | 家具と天井の間につっぱる |
| ストッパー式 | 家具の下に挟み、壁側へ傾ける |
| マット式 | 粘着で底面と床を接着する |
L型金具は「器具を使った家具転対策として最も効果が高い対策」とされ、壁下地の間柱など強度のある場所に取り付けるものです。ポール式は家具の両端で、できるだけ奥側に設置します。マット式は徐々に粘着効果が弱まるので、有効期限に注意という但し書きがついています。
ポール式が「上を押さえる」もので、ストッパー式が「下を傾ける」ものです。働く向きが違うから、組み合わせる意味があるという並びになっています。
取り付け方そのものは書きません。資料が「家具や家電製品、対策器具の取扱説明書に従って取り付けてください」としているためです。
ただし、固定は3つのステップの「最後」にある
同じ資料は、家具転対策を3つのステップで示しています。
- 集中収納・収納方法の工夫 — 納戸やクローゼットに集中的に収納し、普段過ごす場所に家具を置かない。棚は重いものを下に
- レイアウトの工夫 — 出入口などの避難通路を避け、ベッドの方向に倒れてこない向きに置く
- 器具で固定 — 「ステップ①とステップ②を行ったら、最後の仕上げに家具転対策器具で家具類を固定しましょう」
器具は最後です。置き場所と中身を先に見直したうえで足すもの、という順番になっています。
ステップ①は家具を固定できない時、収納の中身でできること、ステップ②は地震対策は、賃貸でもできることからと地震で家具が危険になる場所、東京消防庁の4条件で扱っています。
そもそも、なぜ固定するのか
資料は、家具類の転倒・落下・移動によって「3つの危険」が生じるとしています。
① ケガ 近年発生した地震でけがをした原因を調べると、約30~50%の人が、家具類の転倒・落下・移動によるものでした。
② 火災 転倒・落下した家具などが電気ストーブなどの電源スイッチを押し、付近の燃えやすいものに着火するなどして火災が発生することがあります。
③ 避難障害 避難通路、出入口周辺に転倒、移動しやすい家具類を置くと、避難経路を塞いだり、引き出しが飛び出すことで、つまずいてケガをしたり、避難の妨げになることがあります。
2つ目の「火災」は、当サイトでこれまで扱っていませんでした。倒れた家具が暖房器具のスイッチを押すという経路です。家具が倒れて終わり、ではないという指摘になります。
免震マンションでも、対策は要る
同じ資料の質問9に、次の記述があります。
免震機能付きマンションでは、免震機能の無いマンションに比べると、家具類の転倒・落下・移動の発生率が半分程度でしたが、それでも約3割の世帯で発生していることが分かりました。
これは東京消防庁が実施した、平成28年熊本地震による室内被害調査に基づくものです。半分程度に減るが、ゼロにはならないという読み方になります。
この記事が書いていないこと
- どの製品を買えばよいかは書いていません。資料が示しているのは器具の「種類」と組み合わせ方であって、商品ではありません
- 取り付け手順は書いていません。資料自身が製品の取扱説明書に従うよう求めています
- 「L型金具と同等」を数値では示せません。原文が「期待できます」という書き方であり、実験値の提示がないためです
この情報が、どこから来ているか
出典は1系統です。東京消防庁の「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」(令和6年1月、東京消防庁防災部震災対策課)と、同庁の電子学習室のページです。当サイトの家具対策の記事は、いずれもこの同じ資料に依拠しています。この記事で出典が増えたわけではありません。
また、約30〜50%や約3割といった数値は、いずれも東京消防庁の調査によるもので、他機関の調査と突き合わせたものではありません。電子学習室のページには発行日の表記がないため、日付が確認できるのはハンドブック(令和6年1月)の側だけです。
出典: 「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック — 地震から命を守る家具転対策」東京消防庁防災部震災対策課(令和6年1月)、および東京消防庁 電子学習室「地震に備える〜家具類の転倒・落下・移動防止対策〜」(発行日の表記なし)。出典は1系統です。