地震の火災は、停電が復旧したあとにも起きる

地震の火災は、揺れているあいだに起きるものだと思いがちです。ただ、国の資料はそうは書いていません。

過半数は「電気が原因」

内閣府のページに、次の記述があります。

地震による火災の過半数は電気が原因という事実をご存じですか。東日本大震災における本震による火災のうち原因が特定されたものの過半数が電気関係の出火でした。

この数字の出どころは、日本火災学会誌の「2011年東日本大震災 火災等調査報告書」だと内閣府が明記しています。当サイトはその報告書そのものを読んでいません。内閣府が引いている数字を、そのまま紹介しています。

また東日本大震災についての割合であり、ほかの地震に同じ割合が当てはまるとは書かれていません。

起きる時点が、直後とは限らない

総務省消防庁のページには、こう書かれています。

地震火災とは、地震の揺れによる建物や設備の損傷が原因で発生する火災の総称です。電気に起因する火災が特に多く発生しています。地震直後だけでなく、停電後の復電時など時間が経ってから起こることもあります。

停電が復旧したときに起きる、という点がこの記事の主題です。揺れが収まって、避難して、しばらく経ってから電気が戻る——そのときに、倒れた家電や傷んだ配線に電気が流れます。

対策として挙げられているのが感震ブレーカーです。一定以上の揺れを感知して自動で電気を遮断する装置で、消防庁は理由をこう書いています。

地震時の電気火災を防ぐためには避難する際にブレーカーを落とすことが有効ですが、大規模地震時など自力でブレーカーを落とすことが難しい場合や、不在時に地震が発生することもあります。

手で落とせるなら、それでよいという書き方です。装置が要るのは、落とせない場合と、家にいない場合です。

電気工事が要らない種類もある

消防庁は4つの種類を挙げています。賃貸で気になるのは、工事の要否です。

種類電気工事
分電盤タイプ(内蔵型)必要
分電盤タイプ(後付け型)必要
コンセントタイプ必要なものと、不要なものがある
簡易タイプ記載なし(おもりやバネで物理的に落とす)

後付け型は「漏電ブレーカーが設置されている場合に設置が可能」とされています。コンセントタイプは、そのコンセントからの電力供給だけを遮断するものです。

どれを選ぶべきかは書きません。出典も「ご自宅に合うタイプを選びましょう」までしか言っていません。設置の手順も書きません——工事が要るものがあるためです。

なお、お住まいの自治体が設置費用の支援をしている場合があるとされています。制度は自治体ごとに違うので、具体名は書きません。お住まいの自治体のページでご確認ください。

つけるだけでは足りない、と書いてある

ここが、いちばん見落とされやすい部分だと思います。内閣府は設置の留意点として、次のように書いています。

感震ブレーカーの設置に際しては、急に電気が止まっても困らないような対策と合わせて取り組むことが必要です。

挙げられているのは次の点です。

2つ目が重いところです。夜に地震が起きて感震ブレーカーが働けば、部屋は暗くなります。その状態で避難することになるので、足元の明かりが要る、という順序です。対策が別の条件を作るという関係が、出典自身の言葉で書かれています。

懐中電灯については、防災の備蓄、中身は世帯構成で変わるでも触れています。そちらでは東京都が「実際に使えるか定期的に確認しておくことも重要」と書いていました。持っていることと、その場で使えることは別という指摘です。

家具の火災とは、別の経路

当サイトには穴を開けずに家具を固定する、2つ以上を組み合わせる方法があり、そちらでも「火災」を扱っています。ただし経路が違います。

どちらか一方の対策で、もう一方が防げるわけではありません。

この情報が、どこから来ているか

出典は2系統です——総務省消防庁予防課「感震ブレーカー」と、内閣府「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」。当サイトの防災記事でこれまで使ってきた東京消防庁の資料とは別の系統で、今回はじめて出典の幅が広がりました。

そのうえで、限界を3つ書いておきます。

1つ目: 2系統といっても、どちらも国の機関です。民間や学術の独立した情報源には当たっていません。

2つ目: 「過半数」は孫引きです。内閣府が日本火災学会誌の報告書から作成したもので、当サイトは原典を読んでいません。

3つ目: どちらのページにも発行日・更新日の表記がありません。いつ書かれた情報かを、読む側が確認できない形になっています。

出典: 総務省消防庁 予防課「感震ブレーカー」(発行日の表記なし)、内閣府 防災情報のページ「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」(発行日の表記なし)。「過半数」の数値は、内閣府が日本火災学会誌「2011年東日本大震災 火災等調査報告書」より作成したものとして記載されているものです。