断水の復旧、目標は最長4週間以内・実績は10日〜6か月。その「断水期間」の測り方も同じ資料に書いてある
厚生労働省が東日本大震災のあとにまとめた報告書に、水道の復旧が長引いた事業体を集めて調べた章があります。目標と実績が、隣り合って書かれていました。
指針が示している目標
まず目標のほうです。引用の中にある「指針」は、厚生労働省健康局水道課が平成20年3月に出した水道の耐震化計画に関する指針を指しています。
応急復旧期間の目標は、水道事業は可能な限り最長 4 週間以内、水道用水供給事業は同 1 週間以内となっている。(厚生労働省 東日本大震災水道施設被害状況調査 最終報告書 補足資料1)
水道事業と水道用水供給事業で、目標が別に置かれています。
実績は、その目標を超えていた
これに対し表 4.35~表 4.37 に示す水道事業体の断水期間は、この目標期間を超過し、水道事業は 10 日~6 か月、水道用水供給事業は 20 日~39 日となっている。(同)
10日と6か月では、備え方がまったく変わります。ここで、どの事業体を数えたのかを見ておく必要があります。
数えた相手は32事業体、しかも長引いた側
対象事業体は、原則として断水期間が約 1 ヶ月以上の事業体とし、震度、液状化、津波の被害要因や、人口規模や事業形態(水道事業と水道用水供給事業)等の給水に及ぼす影響の大きさを考慮して表 4.35~表 4.37 に示す 32 事業体を選定した。(同)
この章の目的は「長引いた理由を調べること」で、そのために長引いた事業体を選んでいます。だから10日〜6か月という幅は、全国の水道事業体がこの範囲に散らばっている、という意味ではありません。32という数も、あわせて覚えておく数字です。
「断水が解消した日」の決め方
もうひとつ、期間の測り方そのものが書かれています。
このような影響を排除するために表 4.35~表 4.37 に示すように、断水が概ね解消した日を最終の通水率から 5 ポイント低い通水率の日に設定し、これを基準に断水期間とその要因を分析する。(同)
全戸に水が戻った日ではありません。最後の5ポイント分は、期間の外に置かれています。
なぜ外したのかも、その手前に書いてあります。
これはこの間、水道事業体が継続して復旧作業を行っているのではなく、水道事業体以外ががれき処理や道路復旧などの作業や対応を行っているためと考えられる。(同)
最後まで水が来ない期間の理由が、水道の工事ではなく、がれきと道路だった——という説明です。水道の復旧を待っているつもりで、実際には道路の復旧を待っていることがある。この章はそう読めます。
これから起きる地震では、どう想定されているか
上は起きたことの分析でした。想定のほうは、内閣府が首都直下地震について別に書いています。
(3)上下水道:都区部で約5割が断水。約1割で下水道の使用ができない。(内閣府「広報ぼうさい」第74号)
上水道と下水道が、別の割合で書かれています。水が出ることと、流せることは、同じ資料の中でも分けて数えられています。
この記事が扱っていないこと
- 自分の地域が何日で戻るかは書けません。報告書は東日本大震災で長引いた32事業体を対象にした分析で、地域ごとの見通しを示したものではありません
- 熊本地震は扱いません。サジェストの上位に出ますが、熊本の水道復旧を扱った一次資料を今回は取得していません。取れていないものは書きません
- 備蓄する水の量は書きません。備蓄の中身は防災の備蓄、中身は世帯構成で変わるに分けています
- 断水中にトイレを流してよいかは、別に書いています——地震のあとのトイレは、流し方より先に「流していいか」
この情報が、どこから来ているか
出典は2系統です。1つは厚生労働省健康局水道課の報告書、もう1つは内閣府の広報誌です。
報告書の同定について書いておきます。取り出した本文はページ番号が「4-49」から始まる章の抜粋で、そのファイル自体には報告書名が入っていませんでした。別のPDFで表紙と目次を取得し、目次に「【補足資料1】断水解消が長期化した要因」が在ることを確かめて同定しています。ファイル名から推測してはいません。
読んだのはPDFで、本文を機械で取り出したテキストです。版面そのものではありません。取り出しは2つの独立した抽出器で行い、両方が一字一句同じ行として返したものだけを引用しています。原文は行の途中で折り返されているため、引用は折り返しを詰めて1文につないだものです。
引かなかった箇所もあります。指針の名称が入った部分には原文に文字の重複があり、そのまま引くと誤字の指摘が記事の中心を食うため、指針の名は地の文で書きました。同じ理由で、1文の途中から引いた引用が1件あります。
出典: 厚生労働省健康局水道課「東日本大震災水道施設被害状況調査 最終報告書」(平成25年3月)【補足資料1】断水解消が長期化した要因(国土交通省サイトで公開)/ 内閣府「広報ぼうさい」第74号 特集 首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)。PDFから機械的に取り出したテキストであり、版面そのものではありません。引用は2つの抽出器の出力が一致した行に限っています。