在宅避難は勧められている。ただし国の資料は「支援漏れ」を課題に挙げている
「在宅避難」で調べると、やり方や必要なものが並びます。ただ、資料を読む相手を変えると、書かれていることも変わりました。
この記事は住民向けの資料と自治体向けの資料を並べます。
住民向け(東京都)——「しましょう」と書かれている
自宅で居住の継続ができる状況であれば、在宅避難をしましょう。(東京都「在宅避難」PDF 1ページ)
理由も書かれています。
避難所では、環境の変化などによって体調を崩す人もいます。(同)
そして条件が付いています。
事前に住宅の耐震化を行い、食料や水など必要な物を日頃から備え、可能なかぎり在宅避難できる準備を整えておくことが大切です。(同)
「自宅で居住の継続ができる状況であれば」という前置きと、耐震化・備蓄という準備——在宅避難は「避難所に行かないこと」ではなく、条件を満たした場合の選択肢として書かれています。
自治体向け(内閣府)——課題として挙がっているのは「把握」
同じ在宅避難について、国の資料は別のことを書いていました。
加えて、近年自宅等で災害関連死が多く発生していることや、今後南海トラフ地震等の大規模災害ではさらなる被害が想定されることから、これら避難所以外に避難する者の状況把握や支援方策の検討は喫緊の課題である。(内閣府 説明会資料 PDF 3ページ)
支援漏れを防止するため、状況把握を行う主体間の連携体制について平時から検討する。(同)
「支援漏れ」「状況把握」という言葉が使われています。避難所にいれば数えられますが、自宅にいる人は数えられていない——そこが課題として書かれている、という読み方になります。
同じ資料には、実際の災害での例も載っています。
○平成30年7月豪雨では、指定避難所と在宅避難を併用している被災者もおり、指定避難所の避難者と在宅避難者との境が曖昧であった。(内閣府 説明会資料 PDF 16ページ)
こうした需要も含め、在宅避難者の数を正確に把握するため、在宅避難者へスタンプカードを配布し、指定避難所や公民館等における弁当の配給時には当該カードに「はんこ」を押すこととした。(同)
数えるために、紙のカードとはんこが使われています。それだけ把握が難しいということが、具体例として残っています。
2つを並べて言えること、言えないこと
言えること: 住民向けの資料は在宅避難を勧め、国の資料は在宅避難者の把握と支援漏れの防止を課題に挙げています。矛盾ではなく、書いている相手が違います。
言えないこと: 「在宅避難だと支援が届かない」とは書けません。出典が書いているのは「課題である」「連携体制を平時から検討する」までで、届く・届かないの結果ではありません。お住まいの自治体が何をしているかも、資料からは分かりません。
もう1つ、国の資料は行政の側の限界にも触れています。
また、避難者の支援を全て行政職員が担うことには限界があるため、避難者等の支援に取り組む民間団体との連携が必要である。(内閣府 説明会資料 PDF 3ページ)
備えについて、都の資料が挙げているもの
水は日頃からペットボトルなどの水を多めに準備し、近所の「災害時給水ステーション(給水拠点)」の確認をしておきましょう。(東京都「在宅避難」PDF 1ページ)
道路に下水があふれるなど下水道が使用できない場合には、備蓄している携帯用(非常用)トイレや行政が用意したトイレを利用します。(同)
下水については、地震のあとのトイレは、流し方より先に「流していいか」で東京都下水道局の資料を読んでいます。そちらでも「使用制限」と「排水設備の破損」を先に確認する、という順序でした。備蓄の中身は防災の備蓄、中身は世帯構成で変わるに書いています。
この記事が扱っていないこと
- 在宅避難の手順や持ち物リストは書きません。自治体ごとに制度が違い、都の資料も東京都の仕組みとして書かれています
- 「在宅避難と避難所、どちらがよいか」は書きません。出典が比べていません
- 耐震化の判断・工事の話は書きません。建物ごとの話であり、当サイトが読んだ範囲では扱えません
- 商品名は書きません。当サイトも物販で収益を得る側にいます
この情報が、どこから来ているか
出典は2系統(国と都)で、どちらも公的機関です。ただし読んだのはPDFで、しかも本文を機械で取り出したテキストです。版面(レイアウトされた誌面)そのものを読んだわけではありません。
取り出し方も書いておきます。2つの独立した抽出器で同じPDFを読み、両方が一字一句同じ文として返したものだけを引用しています。片方だけで取れた文は使っていません。
使えなかった資料が1つあります。内閣府「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」(令和6年6月)は、ファイル自体にテキストの取り出しを許可しない設定が付いていました。そのためこの記事では引用していません。代わりに、同じ内閣府が公開している説明会資料を使っています。
出典: 東京都「在宅避難」(大震災シミュレーション。PDF 1ページ)、内閣府(防災担当)「在宅・車中泊避難者への支援等について」避難所関係担当者全国説明会 令和6年11月7日 資料(PDF 3ページ・16ページ)。いずれもPDFから機械的に取り出したテキストであり、版面そのものではありません。引用は2つの抽出器の出力が一致した文に限っています。