コーヒーの蒸らしで粉が膨らまないとき、何が起きているのか

お湯を少し注いで待つ「蒸らし」で、粉がこんもり膨らまない——新鮮な豆ではなかったのだろうか、と気になるところです。この記事で分かるのは次の3つです。

先に断っておきます。この記事の内容は1つの情報源にしか基づいていません。裏づけの強さは、コーヒーが苦すぎるとき、変えられるものは3つある(2つの情報源が一致している内容)より弱いものとして読んでください。

蒸らしは「味つけ」ではなく「準備」

コーヒー豆の焙煎・販売を行う THE COFFEESHOP の記事に、次の記述があります。

「粉とお湯を触れ合わせることで、粉に含まれるガスを逃がすとともに、粉全体にお湯の通り道を作ることで、2投目以降に注ぐお湯が行き渡るようになります。」

つまり蒸らしは、そのあと注ぐお湯が均一に通るようにするための前準備と説明されています。

膨らみの正体はガス。そして、ガスは邪魔もする

そのガスが何かも書かれています。

「コーヒーの粉には、焙煎時に発生した二酸化炭素がガスとして含まれており、ガスは成分の溶け出しを妨げる原因になります。」

「焙煎したての粉を使って淹れたコーヒーが薄く感じるのは、ガスが妨げになって未抽出となるパターンが多いです。」

ここから、よく言われる見方に注意が向けられています。

「よく、〈粉がよく膨らむ=豆が新鮮な証拠で美味しく抽出できる〉と言われますが、上記の蒸らしの観点から豆が新鮮であれば、自動的に美味しいコーヒーができるとは言い難いと個人的に考えています。」

「粉がよく膨らむ=豆にガスが含まれているということになりますので、成分はより溶け出しにくい状況です。」

膨らみは「新鮮さの目印」ではあっても、「おいしく淹れられる目印」ではない——というのがこの記事の立場です。したがって膨らまなかったこと自体は、失敗の証拠になりません。

焙煎度によっても膨らみは変わる

「焙煎が進めば進むほど(深煎りになればなるほど)豆の中に含まれる二酸化炭素は多くなり、浅煎りであればガスではなくより水分やその他の成分が多くなります。」

同じ焙煎日でも、浅煎りの豆は深煎りより膨らみにくいということになります。膨らみ方を比べるなら、焙煎度をそろえないと比較になりません。

蒸らし時間を15秒変えた検証

同記事は、粉量・湯量・湯温・投入回数を変えずに蒸らし時間だけを変えた比較を載せています。数値は次のとおりです。

蒸らし時間BrixTDS
20秒1.080.86
35秒1.150.91

Brix・TDS が何を指すかも書かれています。

「Brixは出来上がったコーヒー100g中に含まれるショ糖のg数 、TDSは出来上がったコーヒーにどの程度コーヒー成分が含まれているのかの数値になります。」

「たった15秒の差ではありますが、蒸らしの時間が適正であればあるほど、2投目移行に溶け出す成分に影響があり、出来上がったコーヒーの味わいを決定していくことがわかったかと思います。」

この検証をそのまま一般化はできません。豆は中煎りの1種類(記事内で終売と明記)、ドリッパーも特定の製品を使った、1回分の比較です。読み取れるのは「15秒の差でも数値が動いた」というところまでで、あなたの豆で35秒が最適だという話ではありません。

長ければよい、でもない

蒸らしを長くとる方向にも注意があります。同じ運営元の別記事には、こう書かれていました。

「蒸らしの時間が長すぎると、2投目移行に取り出す成分のバランスが崩れやすい傾向にあり、渋みやえぐみといった舌が収斂するような味に仕上がりやすいです。」

この一文はコーヒーが苦すぎるとき、変えられるものは3つあるでも扱っています。短すぎればお湯が行き渡らず、長すぎれば渋くなる——蒸らしは、どちらかに振り切れば正解になる工程ではない、という位置づけになります。

今日できる1手

膨らみを見るのをやめて、袋に書かれた焙煎日を見ることです。焙煎したてで薄く感じるなら、豆が悪いのではなくガスが抜けきっていない可能性が挙げられています。数日おいてから同じレシピでもう一度淹れると、比較になります。

この記事が答えていないこと

  1. 何秒が正解かは書けません。紹介した検証は特定の豆・器具での1回分です
  2. 焙煎から何日目が飲みごろかも書いていません。この情報源に日数の記述はありませんでした
  3. 裏づけは1系統だけです。運営元の異なる情報源で同じ内容を確認できていないため、コーヒーが苦すぎるとき、変えられるものは3つあるの内容より弱い扱いにしています

出典: THE COFFEESHOP MAGAZINE「コーヒー豆が『蒸らし』で膨らまない時は?『蒸らし』の目的や方法、最適な時間について解説します。」2024年3月26日公開・2025年7月17日更新(記事下部に自社豆EC・定期便への導線あり)。長すぎる蒸らしについての引用のみ、同誌の別記事「ハンドドリップの過抽出の改善方法」(2024年1月29日、Mayuka Jimbo)より。いずれもコーヒー豆の焙煎・販売を行う事業者の記事で、公的機関の資料ではありません。また、この記事の内容はこの1つの運営元の記述のみに基づいています。